今を生きる魂への物語
玻璃真人新記 真言の…
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うずめ流 玻璃真人播磨旅 その5
2020年9月21日 (月)

人生には昔から苦手なものと、ある時から突然苦手になるものがある。車の運転は得意とは言えないが、高速もガンガン走ってきたし今もまぁまぁ走れる。ある時から苦手になったのは高速道路のトンネルである。出口が見えない長いトンネルで魂を持っていかれそうな何とも言い難い感覚に襲われるようになったのが数年前。走れないことはないが、できれば避けたい。名阪、中国自動車道と長いトンネルを走行することなく来た。

1日目の宿泊先の城崎温泉まで青玉神社から1時間半。北近畿豊岡自動車。ここから今回の苦行ミッションがスタートした。トンネルラリーである。行けども行けどもトンネル。1㎞あたりならまぁいいが、3㎞ともなると自分を鼓舞し続けなければならない。そんな時に歌っているのがなぜかくれクレヨンしんちゃんのテーマソング。サイだらけ埼玉〜♪の曲を繰り返している(笑)ゆずり車線で道を譲り、道の駅があれば立ち寄りを繰り返しつつ何とか豊岡まで辿り着いた。修行もできる有意義な旅である(笑)写真は立ち寄って一息ついた道の駅『但馬のまほろば』無料の埋蔵文化財センターがあったのだが、残念ながら休館日。この辺りはコウノトリで有名らしくオブジェを撮ってみたがチョイ怖である。


登録日:2020-09-21 Mon 18:05:49  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

うずめ流 玻璃真人播磨旅 その4
2020年9月20日 (日)

磐座探索はまたのお楽しみとして、次に向かったのは同じく多可町内にある『青玉神社』グーグルの案内で30分ほどで到着したのは道の駅『杉原紙の里・多加』道を挟んで神社と向かい合って立つ施設なので、参拝者も車を停めているようだ。

この神社は樹齢千年と言われる夫婦杉に会いたくて立ち寄った。高さ45m、幹周り11mの御神木はなかなかの迫力。これまで何本も神社の巨木は見てきたが、この木を見上げた時はちょっと感動した。途中から二俣に分かれているので、夫婦円満、縁結びのご利益があるとされている。これで我が家も安泰である(笑)いやいや、まだ縁結びの方も期待しておこう。境内には神社名の由来となっている青い玉が置かれた池があり、木々を映した水面が美しかった。

お参りの後は、道の駅の奥の和紙博物館を見学。『杉原紙』は教科書にも載っているのだとか。社会見学も兼ねた有意義な旅である。


登録日:2020-09-20 Sun 11:11:03  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

うずめ流 玻璃真人播磨旅 その3
2020年9月19日 (土)

軌道修正してグーグルに導かれるままに辿り着いたのは多可町加美区の岩座神という地域。兵庫県の土地勘ほぼゼロなので、自分が向かう場所がどの辺りなのか、何という地名なのか把握できていない状態での移動。地図本が頼りだった時には、もう少し慎重な下調べもしていたが、ルートと時間だけ調べてあとはお任せ。スマホが機嫌を損ねたら、迷子になる危険な旅(汗)岩座神というこの魅力的な名が付いている場所は、棚田で有名な集落のようで、あちらこちらで刈り入れ作業が行われていた。入口の看板によると、行こうと思っていた千ケ峰の磐座の辺りはもう少し先まで車で行って、さらに半時間近く歩くらしい。本日中にもう一箇所寄りたいので、チェックインの時間を考えると時間的に無理な行程。近くにあった『五霊神社』にお参りして、潔く諦めることに(笑)周囲の散策を兼ねてまたゆっくりと訪れて再チャレンジしたいところである。


登録日:2020-09-19 Sat 15:38:49  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

うずめ流 玻璃真人播磨旅 その2
2020年9月18日 (金)

なぜ日本のへそに行こうと思ったのか?へそは子宮につながっている。日本列島の子宮の入り口を見てみたかったのだろうと、今思いついた(笑)お昼の時間を回っていたので、道の駅に立ち寄り物色。旅で助六はあまりに味気ないので、ちょっと値は張るが800円の焼鯖ずしをセレクトして車中食。脂が乗って旨いのだが、一個ずつの寿司の上下に小さなラップがくっ付けられている。寿司を食べているのかラップを剥がしているのかというランチタイム。鯖の脂でお腹が重い。やはり400円の助六にしておくべきだったかと思いつつ、再びグーグルの案内で運転再開。

左折の指示で曲がったのだが、微妙に一本手前を曲がってしまったらしくグーグルが戸惑っている。Uターン場所を探して進むと目の前に鳥居が現れた。旅のあるあるである。ここに寄って行けということだろうと『大歳神社』に参拝。どうやらここがスタート地点のようだ。階段を上がってみると広々とした境内の美しく整えられた神社だった。玻璃真人播磨旅のご挨拶をして次の目的地を目指した。参拝後、どよ〜んと重かったお腹がすっきりとしていたような(笑)


登録日:2020-09-18 Fri 13:53:37  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

うずめ流 玻璃真人播磨旅 その1
2020年9月17日 (木)
この10月10日付で『玻璃真人新記』の第一部改訂版と第三部を出版することになったが、この期に前々から気になっていたことを実行することにした。『玻璃真』と同じ『ハリマ』の響きを持つ『播磨』を訪れたいと思いながら、なかなか実現しなかった。播磨という地名から玻璃真というのを考えたのではないが、カタカムナ的にも響きが同じものは共通した意味を持つというし、古代史好きとしても播磨は気になる場所である。夏の家族旅行が昨今の事情でキャンセルになった時にふと播磨一人旅企画が浮上し、ゴーツーキャンペーンの追い風を受けて、旅のプロジェクトがスタートした。そのうずめの播磨珍道中を少しずつブログでアップスタート。とりあえず試作中の本を鞄に詰め込んで、玻璃真人の播磨旅に。
9月14日秋晴れの空の下、名阪、中国道を突っ走り、一つ目の目的地の西脇市『日本のへそ公園』に到着。東経135度、北緯35度の交差点である日本のへそを見に。近くのオブジェまでは辿り着いたもののピンポイントの場所は草むらの中で「マムシ注意」の看板があり、立ち入るのを諦めた。田舎暮らしゆえにマムシの怖さは知っているし、実際その公園内で目の前を長い蛇が横切っていった。へそのゴマを取るのまではいかなかったが、へその周りくらいまでは行けたのでまずは良しとして次のポイントを目指した。

登録日:2020-09-17 Thu 14:16:35  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

第三部<響命>本の形になってきました
2020年9月13日 (日)

夏に入稿した第三部が仮製本に。在庫が無くなった第一部も上下巻を一冊にまとめて改訂版に。膨大な文字数を印刷できる状態まで持っていく大変な作業と、校正漏れのチェックもしていただきました。これから最終校正の読み込みです。第二部の製本をお願いした『一期堂』さんに、手作り製本でお願いすることにしました。10月10日に最初の一冊が完成予定です。やっと形になってきてウフフです…あ、校正が待っていた(笑)


登録日:2020-09-13 Sun 19:04:09  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

第三部<響命(きょうめい)> 一部抜粋
2020年4月4日 (土)

4月1日に第三部のクライマックス部分を一気に書き上げました。第三部全体はまたまた長文なので、本という形になるのはまだ先になりそうです。でも、この部分は早く共有したいと思ったので抜粋しました。よろしければ読んでみてください。

 

玻璃真人新記 真言(まこと)の… 第三部<響命(きょうめい)>〜抜粋〜

 

『あ〜ぁ。何てことだ。このタイミングで橋が崩れるなんて…。でも渡っている途中で無くて助かったよ』

大きくため息をつくと真言は辺りを見回した。

カラスの姿は既に無かった。

『え?おい。どこに行ったんだよ。道案内をしてくれていたんじゃなかったのか?』

何か重要なメッセージを携えているに違いないと思っていたカラスが姿を消してしまったので、真言は拍子抜けした。

『何のためにオレはここまで来たんだ?またユリカさんやオサたちに迷惑を掛けることになったし…』

そう思った時に、真言の頭の中に声が響いた。

『答えを知りたくは無いのか?』

『誰?』

真言は再び周囲を見回した。

「答えって何の?」

真言は思わず声に出してたずねた。

メッセージを送ってきた相手を知ろうと真言は目を閉じた。大きく枝を広げた一本の木が浮かんだ。

『何の木だろう?コナラ?いや、ブナ。白ブナの木だ』

五月のフィールド・アドベンチャー部の合宿以来、木の種類を覚えることに努めた真言には、それが白ブナの木であることが分かった。

『今日お前がずっと抱いている問いの答えを知りたいか?』

もう一度声が響いた。

『知りたい』

真言がそう答えると、先ほどのカラスが再び真言の前に姿を現した。百合香との約束を破るのは忍びなかったが、真言はカラスを追って歩き出した。

反射的に「知りたい」と答えて歩き出した真言だったが、自分がいったいどんな疑問を抱き続けていたのか正直なところ分から無かった。

谷から五百メートルほど森の中に入った場所で、カラスが真言の頭上を旋回して空の向こうに消えていった。

『ありがとう。ここだね』

真言はカラスに礼を述べてからイメージの木を探した。目的の木はすぐに見つかった。しかしその木は想像していたものと異なっていたので。真言は少し驚いた。木の根元まで行って幹を見上げるとまた言葉が響いた。

『想像よりも小さな木だと思って驚いているようだな』

自分の思いを見透かされた真言は素直にうなずいた。

『人間というのは面白い。樹齢何百年年という木は神が宿る神木だと言い大切に祀る。そして人にメッセージを伝えることができる木ともなると、何人も手を繋がねば囲みきれ無い巨木であると思い込んでいる。私の仲間にも樹齢四百年を超えるものもいる。しかし私はたかだか樹齢数十年でお前が二人いれば十分に幹を囲める。この山の中でいくらでも見つけることができる大きさだ。人間は自分勝手な思い込みに支配されている。我々に違いなど無いのだ。年老いた巨木であろうとヒヨロヒョロとした若木であろうと、同じ智慧を持ち同じ情報を共有している。我々の間には分離というものが無いからだ。以前お前が出会った銀杏の木が、伐採される自分の運命を受け入れたのは、これから育つ若木と自分が同じものであることを知っていたからだ。我々には命の分離も無い』

真言は返す言葉を持たなかった。自分が白ブナの言う思い込みに囚われていたからだ。

『お前はここに来る必要さえなかった。私がこれからお前に伝えることは、家の庭木から聞くこともできたのだ。お前が耳を傾けようとしなかっただけで、どの植物も伝える術を持っている。大楠だから、歴史的意味がある大銀杏だから繋がったわけではない。お前の意識が繋がれると信じたからだ』

白ブナの言葉が途切れ、真言は大きなため息をついた。

『では、お前の聞きたいことは何だ』

白ブナが真言にたずねた。

『聞きたいこと…』

真言はしばらく考えてから言った。

『今日オレが抱いていた問いとは、植物は人類が滅びることを望んでいるのかということです。タナシロ教授の計画に協力して…』

『あの男はこの山に何度か訪れて我々と繋がることを試みた。会話の対象に選んだのはお前の思い描いたような樹齢数百年のカツラの老木だった。カツラの木に訴えたあの男の思いは、この山の植物全体が共有している。もちろん私もあの男が伝えてきたメッセージを理解している。あの男は我々に、地球を救うために力を貸して欲しいと訴えてきた。人類がこのままの在り方を続ける限り、地球の滅亡は避けられ無いと。人間の愚かな暴走を止めることはもう不可能だから、地球が破壊し尽くされる前に人類を滅ぼしたいと』

真言が白ブナに聞いた。

『あなたは…植物たちはそれにどう答えたのですか?』
『世界中の仲間たちが人間の存在に疑問を抱き始めている。このまま人類を放置しておいて良いのかと植物たちは思っている。しかし、我々は人類を滅ぼそうと思った事はない。我々の中にそういう意識は存在していないのだ。地球のこれまでの歴史の中で、人類は何度も自然を壊滅させてきた。しかし私たちは人類を滅ぼそうとはしなかった。そして焦土に再び芽を出し、長い年月を経て今の自然が作り上げられた』

『ではタナシロ教授の計画に協力をする意思はないということですか?』

真言が白ブナの真意を確かめた。

『今回のことは人間が私たちに頼み込んできたのだ。人類という存在に自らピリオドを打ちたいと。全てのものは進化を続けている。お前たちの中にもインディゴチルドレンやクリスタルチルドレンと呼ばれる新しい人類が生まれているだろう。同じように植物の中にもこの時代に合わせて、新しい意識を持って生まれてきているものがいる。創造という意識しか持ち得なかった植物の中に、破壊と創造という意識を持ち合わせて生まれてきたものがいるとしたらどうだろうか。新しい創造のためにあの男の提案を受け入れても良いと考えるかもしれない』

「破壊と創造…」

真言がそう呟くと白ブナが再び話し始めた。

『破壊は悪ではない。万物は破壊と創造を繰り返し流転している。お前の細胞もそれを繰り返すことでその肉体を維持しているのだ。植物もまた種という殻を破り成長していく。だから破壊が悪、創造が善というその捉え方もまた誤りなのだ。我々には人間の様な善悪という判断の意識も無い。お前はあの男が悪で、自分は善だと思っている。あの男はただ自分の役目を果たそうとしているだけだ。地球を破壊から救う。それはお前たちの言う善ではないのか?』

次に白ブナが発した言葉に真言は大きな衝撃を受けた。

『既にあの男の計画は実行に移された』

『え!まさか!まだその時刻には…』

真言は慌ててスマホを取り出すと時刻を確認した。計画予定時刻の六時にはまだ二十分ほど有った。

『あの男の身柄はお前の仲間が今しがた確保した。だが、既に実験は行われていた』

真言は目の前が真っ暗になった。恐怖と絶望が真言を包み込んだ。

『ユリカたちは、オサたちみんなは大丈夫なのか?オレはここで息ができなくなって死ぬのか?繭良村の家族は?八重垣の家族は?やがてはミヅキが暮らす京都にもこの恐ろしい現象が広がってしまうのか?みんな死んでしまうのか?オレは大切な人たちを守れなかった…。トドロキさんの家に生まれるはずだった子どもももう…』

色々な人々の顔が真言の脳裏を駆け巡った。心臓が大きく波打ち、あまりの恐怖感から真言は雪の上に吐いた。

『大切なもの。お前たち人間はいつもそれだ。大切なものとそうでないものに分ける。お前は自分が世界を守るために働いていると思っている。だが、その世界とは何だ?今お前の頭の中に浮かんだ人間たち。それがお前の世界だ。それが人間の持っている分離というものだ。恋人。友人。家族。コミュニティ。国。人類。それがお前の捉えている世界だ。その上人間は同じ種の中でさえいがみあう。地図の上に引かれた一本の線で。物事の考え方の違いで。隣人でさえ。いや、家族さえも…』

「もう聞きたくない!やめてくれ!今更何を言われても手遅れなんだ!」

真言は何度も頭を振って叫んだ。

『逃げるのか?お前は私と話していると思っているようだが、お前が今話している相手はお前自身だ』

「え?」

『自分の深い意識と繋がるために、お前が私という存在を選んだに過ぎない。繋がることをここで終えたいのならばそうすればいい。お前の自由意志だ。私は黙して、ただの白ブナの木に戻ろう』

真言は大きく深呼吸をして、ざわつく心を落ち着けることを試みた。

『オレ自身との対話?』

『表面のお前との対話ではない。お前自身が認識できないほど深い世界でしか答えは得られない。お前の求める答えを知っているのはお前自身だ。他の誰もお前に答えを与えられない。ただ自分を掘り下げる。そこにお前の答えがある』

真言はもう一度深く息をすると、白ブナの根元に座り目を閉じた。

『この問いの最後の答えまで辿り着きたい』

『人類と我々植物の大きな違いは分離と結合だ。人類は自分と他者は分離している別のものだと考えている。だが、我々は自分と他者は繋がっており同じものだと感じている。分離から生まれるのは孤独と恐怖だ。それから逃れるために人間は誰かと繋がろうとする。しかし繋がろうとする原因が孤独と恐怖である限り、別離や消失という別の恐怖が生まれる。もともと一つのものであり、繋がっていると認識していれば孤独も恐怖も感じないのだ。人類は自らを他のものから分離させ続けてきた。古き時代には人類は山と海と繋がっていた。土に触れ、植物に触れ、お互いの命を共鳴させて生きてきた。植物の声を聞き、動物と共存していた。ところがこの二百年足らずの短い時間の中で、土を覆い、山を切り拓き、川も海も汚し続けてきた。もうお前たちに我々の声は聞こえない。薬に苦しめられている植物や大地の生き物たちの叫び声が聞こえない。だからお前たちはこれほどまでに自然を破壊できるのだ』

真言は何一つ反論できないまま白ブナの話を聞いていた。

『あの男が手を下すまでもなく、近い将来、植物は人類が必要とする量の酸素を作り出すことができなくなるだろう。時が少し早まるだけのことだ。その前にミツバチたちがお前たちの食を助けることができなくなるだろう。飢える苦しみを体験せずに、酸素が足りなくなって死ぬのも考え方によっては悪くない』

『それは…』

何か言いたかったが、真言は言葉にできなかった。

『ただ人類という種が滅びるに過ぎないのだ。この二百年足らずでお前たちは幾多の種を絶滅させてきた。人類もその一つに入る。それだけのことだ』

真言の頭に以前書物で読んだ絶滅した動物たちの姿が浮かんできた。胸が締め付けられて真言はまた大きく息をした。

『私の枝を見よ。私の葉を見よ。私の幹を。私の根を。その根の先を見よ。お前の心の目で見よ』

真言は白ブナの全てを見つめようと試みた。

幹の中を水が流れる音。夏の青々と茂る葉は気孔を開き、呼吸、光合成を行っている。樹液を求めて来る虫たち。虫たちを求めて来る鳥たち。枝に止まる小さな鳥が仲間を呼び寄せる。枝は時には鳥たちの住処になる。小動物は幹をよじ登り、木の穴には木の実が蓄えられている。根の深さは一メートルにも満たないが周囲にどこまでも広がっている。

『根の中にも深く意識を広げて見よ』

白ブナの言葉に従い真言は地中の根に意識を向けた。

太い根が細い根に分かれ、そこからヒゲのような根が広がっている。その根の周りにはミミズや小さな虫たち。更に意識を向けると微生物の姿が見えた。無数の微生物が根を取り囲んでいる。根にも土にもたくさんの命が輝いていると真言は感じた。そして微生物よりももっと小さな何か、真言にはそれが何なのか分からなかったが、キラキラと輝くもので全てが彩られていた。

『これは命?そしてこれはエネルギーなんだ!』

真言の意識がその輝くものと溶け込んだ時に、真言は自分自身が、白ブナが、森がそしてその外に広がる何もかもが輝いているのを感じた。

『この輝く何かでオレたち生きとし生きるものは全て繋がっているんだ。オレはこの根っこの微生物で、この白ブナの木で…この大地で。そうだ。この地球なんだ』

感動という次元を超えていた。これを恍惚と呼ぶのかもしれないと真言は思った。

『お前が望むなら。その全てと繋がった喜びのままに意識を閉じ、この世を去ればよい。現実に戻って恐怖と苦しみを味わうことなく、生まれる前の世界に還ることができる。それも悪くはない。あるいはヤエガキ マコトという人間に戻り、現実を再び味わうこともできる。お前の自由意志だ』

白ブナが言った。

真言の意識はしばらくしてから答えを出した。

『ヤエガキ マコトの現実に戻ります。戻った世界が恐怖に満ちたものであっても、たぶんオレはその世界を経験するためにここに来たと思うから』

『ならば戻るが良い』

真言は白ブナの根元で目を開いた。日は既に沈み、辺りは薄暗くなっていた。体の実感が戻り真言は身震いをした。真言が立ち上がろうとした瞬間白ブナの木が再び語り始めた。

『お前は恐怖の中に立ち戻り、これから何を為そうとしている?』

真言はまた目を閉じた。再び目を開いた真言は白ブナを見上げて言った。

『分かりません。何ができるのか。でも、何かをしたい…。たとえ残された時間が少なくても…』

『お前が気づいていないもう一つの真理がある。それをお前に伝えよう。お前がその心理を受け取れるかどうかはお前次第だ』

真言は黙ってうなずいた。

『お前は今しがた真の繋がりというものを体感した。命は全て繋がっており、互いに響き合いながら生きている。その響き合いが美しければ、世界は美しく輝くことができる。今はその響きが掻き乱されている。そのことにお前はもう気づいたはずだ』

真言はもう一度大きくうなずいた。

『お前が現実に向かっていくためのヒントをやろう。お前が繋がっているこの世界はお前の世界なのだ。お前の中に有るのだ。この現実もこれからの未来も全てはお前の中にある。そして現実という世界も一つではない。幾つもの現実が同時に存在している。今ここにいるヤエガキ マコトが見ている世界はお前が作り上げている世界だ。お前の世界を変えたければ、お前自身が変わることだ。あまりにも単純すぎて大抵の人間はそれを見過ごしている。ただそのことに気づき始めている人間たちもいる。そんな人間たちが繋がってそれぞれが自分の世界を変えることを助け合う。それができれば人類が大きく舵を動かせる可能性もある。ただ、残された時間は本当に短い。その中でお前たちに何ができるかだ』

『この世界はオレの作り上げている世界…。しかし、既に教授の計画が実施された今となっては、全て手遅れだ…』

真言はうつむきながら首を振った。

『あの男の機械が有ろうが無かろうが我々は人類を滅ぼすことができた。あの男は自分が選んだカツラの老木の周辺にその波動を送った。だが、この森の樹々はまだあの男の計画を実行に移すかどうか結論を出していなかった。我々はお前が私の元を訪れることを知っていた。お前の深い意識がそれを望んでいたからだ。あの男の思いは聞いた。ではもう一人の人間、ヤエガキ マコトという人間の思いにも耳を傾けようではないかということになった。お前と話をしてから答えを出すことに決めたのだ。破壊という意識を持ち合わせていないカツラの老木は人類を滅亡に追いやる意思はなかった。ただ破壊と創造の両面を持ち合わせた若い樹々の中には、あの男の計画を使って人類を滅ぼすという選択も有ると考えた。私もその若い木の一本だ。だからお前と話した。そして我々は人類に少し猶予を与えることにしたのだ』

「え!ということは…。まだ酸素の減少は始まっていないということですか?」

真言は驚いてたずねた。

『今はまだだ。ただ、何度も言っているように時間がない。人類は自滅の方向に走り続けている。我々が行動に移さなくとも、近い将来お前の恐れている日は訪れるかもしれない』

真言は静かにうなずいた。そしてつぶやいた。

「ありがとう。ありがとう」

知らぬ間に頬が涙で濡れていた。

登録日:2020-04-04 Sat 21:46:40  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

『行くがよいお前の道を』 10年目の日に
2017年2月11日 (土)

今日は建国記念日ですが、実は玻璃真人の本の出版記念日でもあります。2008年の今日、『真言の…』の第一部を自費出版しました。もう9年にもなるんですね。構想が浮かび書き始めたのがその2年以上前ですから、もう10年以上真言たちと付き合ってきたわけです。出版のその日は小さな出版パーティーを開催し、お友だちに集まっていただきました。

9年を振り返ってみて、出版は成功だったとは言えないけれど、書かないより書いて良かった。出さないより出して良かったと思っています。出さなければ抱えずにすんだ悩みも体験しましたが、出したからこそ繋がることのできたご縁もありました。10年目のスタートを切る今日思うのは、玻璃真人の道を歩き続けること。その心を新たにすべくか、昨夜0時を過ぎ2月11日を迎えるとウタが湧いてきました。詩ではなく歌なのでメロディー付きですが、ここでは文字でご紹介させていただきますね。

 

行くがよい お前の道を 訊くでない お前の道を

ただ目を見張れ 真の瞳で ただ耳澄ませ 素直な音を 辿って行けば 

道がわかる 見つめていれば 真は見える

写し出されるそのものは おのが心の鏡に映る

鏡の曇りているのでは 朧に映るばかりぞよ

鏡の歪んでいるのでは 正しきものは 映らぬぞ

お前の道を 行くがよい お前の足で行くがよい 誰にも道は尋ねるな

おのが心に従えよ 神と思える声にとて 

お前の答えでないのなら その道選ぶで 決してない 

お前の道をひとりで行けよ ひとりで行けども ひとりでないぞ

この満月の 如月の月の満ち満ち満ち満ちる日に 

国の建ちたる寿ぎのこの日に お前に贈ろうぞ

このウタお前に贈ろうぞ ただお前の道を行け

 


登録日:2017-02-11 Sat 11:57:14  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

鬼は外?福は内?
2017年2月3日 (金)

久しぶりのブログアップです。今日は節分。季節を分ける日で、明日からは春になりますね。

節分と言えば、豆まき。子どもの頃はなんだかワクワクしたものです。年の数プラス一粒を食べると言われていますが、子どもだと10粒くらいしか食べられなかったので、豆好きの私は「本当は10粒だけど、2倍、3倍食べるのは良いのだ」というルールを勝手に作り、パクパク食べていました。

今では恵方巻きというのがとてもポピュラーになりましたが、私の育った三重県津市周辺には、その様な風習がなかったように思います。少なくとも、我が家ではありませんでした。バレンタインデーのチョコレートの様に、気づけば風習化していたという感じですが、広めた人のアイデアはすごいですね。家族で楽しめるイベントが一つ増えたと思うと、それもまた良いのかもしれません。

節分に「鬼は外〜」「福は内〜」と言いながら、豆をまくのが一般ですが、地域によっては、「鬼は外〜」と言わない所もあるようです。以前よく行っていた奈良県吉野の『天河大辨財天社』で行われる節分祭では、「鬼は内〜」「福は内〜」と唱えながら豆がまかれます。鬼を神として崇めてきた神社なので、そう唱えるようです。豆まき一つ取っても、常識や当たり前と思っていたことが、必ずしもそうとは限らないんですね。歴史が常に勝者にとって都合の良い様に塗り替えられているとしたら、鬼と呼ばれているものが、実は神の一面を持っているのかもしれないな…などと、思う節分の日。

写真は柊が無かったので、庭に生えているトゲトゲの木。名前は知らないのですが、当たると結構痛いのです()


登録日:2017-02-03 Fri 11:46:03  |  コメントを書く (0)  |  問い合わせる  ページトップへ

1月のうずめのラジオのお知らせです。
2017年1月10日 (火)

2017年明けましておめでとうございます。年明け早10日、新年のご挨拶が遅れてしまいました。年末年始から感情の乱れが多く、生活面でも感情面でも、これまでずっと見て見ぬふりというか、気づかないふりをしてきたことに向き合うスタートを切ったという感じの幕開けですが、そろそろ自分軸を立て直さなくてはと思いブログをアップ。

今日火曜日は、ゆめのたねラジオ『うずめの玻璃真人ハマリビト』の放送日。1月の第一回目の放送は、1月3日だったのですが、年に一度の親戚花札大会に興じて聴き逃してしまいました()。ありがたいことにお正月にもかかわらず、聴いていてくださったリスナーさんから、感想をいただいたのですが、自分が聴けていないのでどんな仕上がりだったのかドキドキです。『201211月の気づき』という長い詩を朗読したのですが、まさに今の自分に聴かせてやりたいようなことを綴った詩です。ご興味がありましたら、今夜8時から半まで、http://yumenotane.jp 

東日本チャンネルをポチッとしてくささいね。写真は美里町の辰水神社のジャンボ干支です。それでは最後になりましたが、みなさま楽しい一年をお過ごしくださいね。


2017-01-10 Tue 13:06:15 / Name : うずめ
美里町の冬の風物詩をもう一つ。南長野のイルミネーションです。
2017-01-10 Tue 13:08:31 / Name : うずめ
写真添付忘れ!
登録日:2017-01-10 Tue 13:02:41  |  コメントを書く (2)  |  問い合わせる  ページトップへ

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